気候予測情報のバイアス調整(補正)

- 気候予測情報のバイアス調整法の開発・検証
- バイアス調整済み気候予測データベースの開発
バイアス補正データセットについては→こちら(準備中)
左図はChatGPTによる”バイアス補正”のイメージ図
それっぽいようなそれっぽくないような...
研究の詳細
世界の様々な機関により気候の予測が行われています.この予測情報は気候変化が進んだ将来の洪水や渇水のリスクを把握するための有益な情報です.しかしながら,気候モデルによる予測情報そのものは数値モデル特有のバイアスを含んでいたり,利用したい目的や対象(地域・期間)に適した形になっていなかったりと,そのまますぐ使えるものではありません.また,最近は予測情報がビッグデータ化しており,膨大な情報のどれを使えばよいのかという判断が難しくなっています.
私たちの研究室では,気候予測情報のバイアスを適切に処理する統計的手法の開発に世界的にも早い段階から取り組んできており,日本において最も利用されている一つの手法を提案してきました.また,それらの手法に基づく,国内外の様々な気候変化リスク推計に適したデータベースを有しており,このデータを活用した様々な共同研究,社会実装を行っています. 今後も引き続きこれらの手法について開発・検証を進めるとともに,今なお更新を続ける気候予測情報を踏まえたアップデートに取り組み,社会に役立つ情報を創出することに取り組んでいきます.
水災害リスク・水環境の将来変化
研究の詳細
私たちの研究室で進めてきた気候予測情報を活用して,国内外における洪水や渇水といった水関連災害リスクが将来どのように変化するかという研究に取り組んでいます.気候予測情報をもとに洪水や渇水リスクを推計するためには,陸面における水収支や熱収支,河川における水の流れについて数値シミュレーションが必要になります.そのような数値シミュレーションを行うための数値モデルは様々なものが提案されています.私たちの研究室には独自の数値モデルはありませんので,目的に応じて公開されている数値モデルから適切なものを選択し利用しています.多くの研究室では独自開発の数値モデルを使った研究を進めていますが,私たちは複数の数値モデルを目的により使い分けているというところに特徴があり強みと言えます.また,数値モデルの入力となる気候予測情報については独自で様々なものを有していることから,様々な情報に基づいた数値実験が可能という点も強みです.
私たちの研究室では将来を考えるうえで,気候変化に合わせて社会変化も考慮することに取り組んでいます.人口や土地利用,農業・産業・技術のありかたは,水害による被害や,水需要を考えるために不可欠です.日本全域で進む人口減少,島嶼地域における観光開発による水需要増加など,それぞれの地域をとりまく社会変化を気候変化と合わせて考慮して,より適切で有益な将来予測情報を創出することに取り組みます.
農業用ため池の維持管理と利活用
研究の詳細
水循環を考えるうえで人間の活動,特に農業の影響を無視することはできません.我が国の農業水利用において古くから重要な役割を果たしているのが農業用ため池です.ため池の多くは江戸時代やそれ以前に作られており,その数は全国で10〜20万とも言われています.古くからの環境が改変されることなく維持されているため,水循環のみならず生物多様性や水環境を考えるうえでも重要な施設です.このため池ですがその多くは住民(農家)によって維持管理が行われています.このため,膨大な数があることも加わり,実際にどれくらいの数が存在しどの用に利用されているかといった実態については行政においても十分に把握できていないことも少なくありません.
地域の農業における水供給において主要な役割を担ってきた農業用ため池ですが,農業用ダムや遠方からの導水など近代的な灌漑施設が整備されるとともに,その重要性が低下したため池も多く,放置・放棄されるものも増えてきました.さらに,現在ため池の管理を担う主要な方々(その地域を支える方々とも重なります)が人口の層が厚い70〜80歳という地域は多く,今後10年でさらに維持管理の手が届かなくなるため池は増えると考えられています.
本研究室では,衛星やドローンなどのリモートセンシングにより得られる情報を活用して,効率的に農業用ため池の状況を把握する技術開発や,実際にため池を利用されている地域でのフィールドワークによるため池の維持管理,住民の認識などを明らかにする研究を進めています.農業用ため池は水資源のみならず生物や環境,さらには地域の文化やアイデンティティを考えるうえでも重要です.気候変化や人口減少が進む中で,農業用ため池をどのように維持管理していくかという点を地域の皆様とともに考えてまいります.
農業用ため池について有効活用するための一つの可能性として,私たちが最近着目しているものが淡水カーボンです.膨大にあるため池を有効活用することでカーボンニュートラルに貢献することはできないかという点を他大学等との共同研究により進めています.
気候変化と地域の水辺環境・生物多様性

- 気候変化が地域社会に及ぼす影響の解明と適応策の検討
- 気候変化が水生昆虫およびその生息環境に及ぼす影響の解明
研究の詳細
気候変化による気温上昇,降水パターンの変化など気象・水象の変化は地域社会に様々な影響を及ぼすと考えられています.もちろん多くの影響は気候変化のみによるものではなく,人口減少,世界情勢,技術発達など様々な要因の結果として現れると考えられます.ただし,その気候変化がその最後の引き金となることが懸念されます.その一例が水辺の生物多様性に関する問題です.外来種の問題や農薬の問題など様々な要因の複合的な結果として生物多様性の損失に至ると考えられますが,そこで気候変化が果たす役割も他と同様もしくはそれ以上となる可能性があります.生物多様性に加えて,ウィンターリゾートの存続可能性など観光産業への影響,赤潮や水温上昇による漁業への影響,湧水や地下水の変化による水環境や文化への影響など様々な事例が考えられます.
本研究室では気候予測情報を始めとする気象,水循環関連の自然環境情報をベースに,社会経済,地理,歴史などの様々な情報を加えた分析を行うことで,気候変化により地域の水辺環境,生物多様性に関する課題解決に資する情報の提供に取り組みます.この取り組みを進めるためには既存のデータでは十分ではない場面も少なくありません.例えば広域の気象観測情報は存在しても,水生昆虫の生息環境として重要な環境を直接計測した情報は存在していません.
気候変化の影響に関する研究は気候変化予測情報が広域を対象としていることもあり,利用可能なデータから広範囲の一般的な傾向を示す傾向があります.地域の課題に重要な情報に関しては必ずしも十分な情報が提供できているとは言えません.地域の課題に対応するためにはそれぞれの課題独自の情報を自ら取得するプロセスが重要です.しかしながらそのような地域の課題に深く取り組む研究者と気候変化のような広域の情報を解析する研究者は別でありそれぞれがさらに連携する余地は多く残っているように感じています.本研究室では両者の研究をつなぐような研究を進めていきたいと考えています.このために,例えば水生昆虫の環境に関する観測やそのための機器開発など,必要な情報を自らで取得することにも積極的に取り組みます.
人口減少地域の水循環・水環境

- 人口減少地域における営農状況の変化が水循環・水環境に及ぼす影響の解明
- 水循環・水環境の観点からの耕作放棄地の活用可能性とその効果の検討
参考資料 → こちら(外部サイトPDF・該当は20P)
研究の詳細
人口減少は地域の営農状況にも大きな影響を及ぼします.特に人口の層が厚い世代が農業を続けられなくなった際に地域の環境は大きく変わる可能性があります.農業の自動化等の技術はこの問題に一定の解決がもたらされることが期待できますが,かつて僅かな隙間までも開発を進めた結果生まれた狭小で歪形な農地はその恩恵には預かれないと考えられます.では,それらの狭小で歪形な農地はすでに何の価値もないかというと,棚田がそうであるように,地域の文化や水環境,生物多様性を考えるうえでは無視できない役割を果たしている可能性もあります.もちろん全ての農地に対して棚田のような価値を見出すことは困難であり,現実的に放置・放棄せざるを得ないものも少なくない(むしろそれが大多数かもしれません)でしょう.私たちはこの問題に関して,放置・放棄がもたらすものは何かという点を水循環.水環境の側面から考えます.資源(人的・経済的)を投入して何らかの操作を行う価値がある,操作を行うべき事例とは何かという点を明らかにすることに取り組みます.実際の農地を対象とした実験,観測など,短期的な成果にとらわれない長期的な視野に立つ研究を進めます.
人口減少に関する問題(上記のため池に関する研究課題もそうです)については現時点においては日本特有の問題とも言えます.しかしながら,今後世界の人口はある時点を境に増加から減少へと転じることも予測されており,いま私たちが直面している問題は今後世界が直面する問題を先取りしたものであるとも言えます.私たちの取り組みが今後他の地域の参考になる可能性は少なくないと考えています.
持続可能な地域特性の継承と都市・地域デザイン(担当:福島)

まちづくりにより整備された広場での伝統的な祭事の様子(山中湖村ゆいの広場ひらり2017)
- 復興まちづくりにおける地域特性の継承可能性と住民参画のあり方
- 地域の空間・社会特性の可視化と地域デザイン戦略への適用
- 環境、社会、制度との関係からみた公共デザイン論
研究の詳細
全国の都市・地域の再生に向けた、インフラ整備や公共空間整備を伴うまちづくりに携わってきた経験から、この国の文化の源泉である各地の地域特性の持続可能な継承と、それに資する都市・地域デザインのあり方について実践・研究を進めています。具体的には、近年より激甚化が進む災害復興からの復興まちづくりにおいて、地域特性の継承のあり方や、そのための住民参画のあり方、地域コミュニティの特徴の読み解き方について実践の報告や国内外の事例研究をしています。さらに地域の生活空間の形成史や住民の地域認識の分析・可視化手法を検討し、そこから地域資源の保全・活用のポイントの抽出、都市・地域デザイン戦略へ反映していく方法論への展開を試みています。また持続可能なまちづくりに資する広場、河川、街路などのインフラ、公共空間の計画プロセスやデザインのあり方について、環境、社会、制度などの変化との関係からデザイン論として確立すべく学術研究を進めています。

